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【講座】真空管オーディオ講座Step2 真空管+ICで作るヘッドホンアンプ
https://www.street-academy.com/myclass/157413
の追加情報を記載しています。

目次

どうやって組み立てるのか?

このヘッドホンアンプは、真空管の音のキャラクターを十分楽しむことができる一方で、通常の有線式ヘッドホン、イヤホンであれば十分な音質・安全な出力で鳴らすことができる性能を持っています。また電源ON/OFF時のポップノイズを抑制する機能も備えています。ホビーとはいっても実用的に使うことができる配慮をしています。
このような機能を実現するため、部品点数が100点以上の大規模な回路が必要となり工作の難易度は「相当複雑なレベル」に上がりました。
けれども、この講座では、ブレッドボード工作の初心者の方でも確実に組み立てることができるような様々な工夫をしています。
ここでは、その内容について説明をします。

配布する部品

受講者の方には、部品一式と説明資料を配布します。真空管の入ったパーツボックスは6AU6 東芝 又は6AU6 RCA の例です。

(1)大型部品の位置ガイドをマーキングしたブレッドボード
黒マジックのマーキングで大型部品の取り付け位置を表示しています。また一部の部品は取り付け済です。この状態から部品の取り付けを始めます。

(2)抵抗、コンデンサ、ジャンプワイヤなどを納めたパーツボックス
パーツボックスの左下のマスに入っている0Ωから取付スタートします。一列の部品を挿し終わったら上段の左へ移り、最後にトランジスタを挿して終了です。
実装図の手順とパーツボックスの部品並びが対応しているので、部品を探したり並べたりする準備が不要です。またマスの中には必要個数だけが入れてあるので挿し忘れを防止できます。更に、マスの底面に部品のサンプルが貼り付けてあるので部品の定数の読み方が分からなくても「現物合わせ」で確認できます。

パーツボックス内の全部品を取り付けた状態です。

(3)組み立て済みの大型部品
そのままではブレッドボードに挿入できない大型部品を、小基板に実装して2.54mmピッチの足ピンでブレッドボードに挿して実装できるようにした組立済の基板アセンブリです。

(4)真空管
6AU6 東芝 通測 Hi-S(通信装置・測定装置用の高信頼管) カートン(25本パック)で購入した未使用新品を2本提供します。戦後の復興から立ち上がった日本が、ふたたび世界のトップを目指して懸命に努力していた時代の逸品です。これを使い切った後は、他の在庫品、または双三極管に変更します。

完成品

全ての部品を挿し終えた状態です。63列ブレッドボードにギリギリで収まりました。LチャネルとRチャネルの干渉を防止するため、LとRの信号ラインが平行する部分はGNDラインを挟む配置としています。またLチャネルとRチャネルの部品配置は可能な限り対称な配置にすることで、視覚的・音質的な安定感を確保しました。

動作チェックと、改造の楽しみ方

すべての部品の取り付けが終了したらチェック工程に移ります。この作品は正真正銘の「工業製品」ですから定量的な検査は必須です。
回路が設計通りに動作している確証こそが「良い音」の基本なのです。そのため回路の測定方法について詳しい説明と実践を行います。

(1)部品の取り付けに間違いがないかを目視でチェック
(2)ACアダプタを接続して電源を投入し発煙等の異常がないかをチェック
(3)DC5VとDC30Vの値をディジタルテスターでチェック
(4)真空管のヒーターが点灯することを確認したらチェックシートを用いて各部の電圧をチェック
(5)試験信号を入力して、設計通りの性能が出ていることをチェック
(6)実際の音楽信号を聴いて使い勝手をチェックし、音量が不足するようなら定数変更して好みのレベルにカスタマイズする。

これで、この講座の作品製作は完了ですが、講座にはまだ続きがあります。

このヘッドホンアンプを使っているうちに、平均的な音量レベルを上げたい/下げたい、とか、もう少し真空管の歪成分を増やしてみたい、
といった改造をしたくなることがあると思います。このような場合に「回路のどこ」を「どのように変える」かを知っていれば、自分だけのカスタマイズが容易にできます。この講座の最後に、簡単な計算式を使って改造を行う方法を説明します。また改造後に各部の電圧チェックを行って異常がないことを確認するために予備のチェックシートも配布します。

歪(ひずみ)の不思議

オーディオ発振器で作った400Hzの正弦波はどんな音に聴こえるか?試してみましょう。(この講座ではPCで使える発振器アプリの解説もします)
オーディオ発振器は歪が極小の純粋な400Hzを発生しますから「美音」が聴こえるかというと...長く聴いていると何とも不快な音に聞こえてきます。
純粋な混じりけのない音なのに、なぜか不快に聞こえます。

一方、お気に入りの歌手が発声する単音は美音に聞こえますが周波数分析を行うと大量の歪を含んでいます。更には、地声が裏声に転じる部分や、さ行の摩擦音、た行の破裂音などの「歪のカタマリ」みたいな音も、なぜか美音に感じます。

人間は自然の音の中から意味のある音を聴き分けて生き抜いてきました。また声による意思疎通を行うことで高度な文明を入手しました。
今の音は「何の音か?」とか「何を言っているのか?」を脳が聴き分けるためには「音の歪成分」が重要な役割を果たしていると思われます。

真空管固有の歪を音に加えると「音が良くなった」と感じるとすれば、それは「心地よく聞こえる歪」が生まれたから、かもしれません。
このヘッドホンアンプで好みの音楽を心ゆくまで聴いて「歪の不思議」を体験していただけると幸いです。